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2021.05.31 MON

「頂点さえも、通過点。コーヒーの道を極める。」

佐々木修一

それは飲み物であり、仕事であり、競技であり、文化である。
2014年ワールドエアロプレスチャンピオンシップで優勝し、DIFFERENTLYとのコラボレーションコーヒーも手がけた佐々木さんに、コーヒーへのブレない情熱を聞いた。

切磋琢磨のなかで気づいた、自分自身の味。

大学生の頃にスターバックスでアルバイトを始めたのがきっかけで、卒業後にドトールコーヒーに入社しました。2年働いた後に、飲食の専門学校に行ってから新宿のPaul Bassettという、コーヒーの世界チャンピオンがやっているお店に入りました。Paul Bassettには意識の高い人が揃ってて、切磋琢磨し合える環境で満足してたんですけど、突き進めていくと、やっぱりポールバセットっていう「他の人の味」を作っていかなきゃいけないので、もっと自分はこうしていきたいな、っていう気持ちが芽生えてきました。

コーヒーとは、人々の生活に寄り添うもの。

Paul Bassettで6年半働いて、辞めてすぐに自分の店PASSAGE COFFEEをオープンしました。三田はよく学生街って言われますけど、あそこは大学生よりもサラリーマンの方が多いんですよ。僕はコーヒーって人間の生活の身近にあって欲しいなと思ってて、店を開くならオフィス街と決めてました。店名の「PASSAGE」は、道とか通過点という意味。うちのコンセプトの一つに「Seed to Cup」という言葉があるんですが、いわゆるコーヒー"豆”って、”種”なんですよね。その種を栽培する農家さんがいて、輸送されてきて、焙煎する人がいて、抽出するバリスタがいて、お客様が飲むっていう、そこまでが一本の道で繋がる。一筆書のお店のロゴも、まっすぐ行く道があったり、紆余曲折があったり、そういうのを表現したかったんです。

勝者を決めるのは、サングラスをかけた審査員たち。

2014年にエアロプレスで世界チャンピオンになりました。競技者が一斉にコーヒーを抽出、制限時間内にそれぞれ一杯だけ作って、それを審査員に提供する。面白いのはジャッジングで、ブラインドテイストって言って、どれがどのカップかわからないようにジャッジするんです。しかも審査員がサングラスをかけるんですね。色が薄いからなんか味も薄そうだな、なんていう先入観を生まないように。サングラスして、スプーンでコーヒーを啜ってテイスティング。そして審査員が美味しいと判断したコーヒーを指差すっていう。トーナメント方式でかなり盛り上がります。世界チャンピオンになって、周りが変わった感はありますね、見られ方というか。でも僕自身はそんなに変わってないですね。僕はただ美味しいコーヒーを研究することがずっと好きだったんで、そこは変わってないです。

人々の生活に溶け込んで、カフェは文化になる。

海外で好きな街、数回訪れたことがあるオーストラリアのメルボルンとシドニーでは衝撃を受けました。オーストラリア人はコーヒーに対してめちゃめちゃ舌が肥えてるんですよ。もうチェーン店が存在できないくらいみんなコーヒーにこだわってて。しかも朝7時半とかから異常なほど混んでるんですよ。感動しましたね。イタリアもカフェが盛んですね。立ち飲みなんでエスプレッソも100円レベル。その代わり、1日5回ぐらい行く。エスプレッソに砂糖をたくさん入れるのがイタリアカルチャーで。最後砂糖を食べるのまでが楽しみなんですよ。日本もここ5年ぐらいでカフェがかなり増えました。日本も昔からのコーヒーチェーン店はやり方を変えないといけない時期は来ると思います。僕らみたいな小さいカフェが多くなってきたんで。

こだわりたいのはコーヒーの味。そしてそのコーヒーが生み出す景色。

とにかく品質にはこだわっていきたいですね。コーヒーを淹れるのは僕だけじゃないので、ブレない味を提供する為にレシピ作りに力を入れています。お客様に今日は美味しいのかな?とか不安になって欲しくないので、そこは絶対担保したいなって。今コロナ渦において、お店を増やしていくことも大切だと思っています。「味を守る」だけっていうのも自己満足に過ぎなくて、それだけじゃダメだろうなって。時代に合わせた人々が求めていることをやっていくことが大切だと思っています。今後もオフィス街に出していきたいです。働き方が変わってきましたけど、僕がコーヒーカルチャーに惹かれた部分って、やっぱり日々働きに来てたりとか、周りにいる人たちがカフェに来て、話し合ってたり楽しそうにしてる姿を見るのが好きなので、そこはこだわっていきたいなと思いますね。

今回のデニムシャツを着てみて。

うちに限らずバリスタって、老若男女に不快感を与えない清潔感がある服装を考えていくと、シャツに行きつくんですよ。無地に近い服だったり、衿が付いてることでストライクゾーンが広がるというか。このデニムシャツも着て働いています。めちゃめちゃかっこいいじゃないですか、デザイン。まずなによりもDIFFERENTLYには、コンセプトに共感してるんです。良いものを適正価格で出したい、ビジネスも大切ですが本質を大切にしたいという部分に。流行りに関係なくっていう想いに共感しましたね。うちも焙煎機はオランダから取り寄せました。選択が渋いねって言われましたけど。焙煎機にもトレンドがあるんですけど、流行りとかは全く意識してないですね。操作性にこだわって、美味いコーヒーを作るにはこれが一番じゃないかなと思ってます。

佐々木修一 Shuichi Sasaki

PASSAGE COFFEE
https://passagecoffee.com/

ワールドエアロプレスチャンピオンシップ 2014 優勝
株式会社 PASSAGE 代表/焙煎士

各種セミナーの講師や、コンサルティング業も務める。

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